オーケストラって何?
古代ギリシア時代には、オーケストラといえば、演劇の伴奏を務める合唱
隊や伴奏の楽隊がいる場所のことでした。
これが今日のオーケストラの語源で、通常10人以上の奏者がいる楽団の
ことを指します。オーケストラの規模や演奏する音楽の種類は様会ですが、
づ綬的には管楽器、弦楽器、打楽器の奏者100人前後で編成される、クラシ
ック音楽の管弦楽団のことをいいます。
歴史をさかのぼれば、モーツァルトの時代まで、オーケストラは今ほど大
がかりなものではありませんでした。この時代、音楽がもっとも必要とされ
た場は貴族の宮廷。食事やカード遊びに興ずる脇で、そこはかとなくメヌエ
ットなどを奏でるのが、多くの音楽家たちの仕事だったのです。
したがって、この時代のオーケストラは、バイオリン、ヴィオラ、チェロ、
コントラバスなどの弦楽器にホルン、オーボエ、フフレート、そして式典や儀
式の際にファンファーレも奏でられるトランペットなどの管楽器を加えた程
度の小編成のものでした。
ハイドンをはじめとする当時の宮廷作曲家たちは、のちにピアノに発展す
る鍵盤楽器(チェンバロなど)を用いて作曲し、演奏の際にもこれを弾きな
がら指揮をしました。すべての楽器が平等な立場にある現在のオーケストラ
とは異なり、作曲家兼指揮者が演奏するチェンバロか、現在のコンサートマ
スターに当たるバイオリンが奏でる主旋律に合わせて、他のメンバーが伴奏
する、というのが当時のオーケストラの形態だったのです。
この時代のオーケストラにとって大きな問題のひとつが、楽器の性能の低
さでした。まだ発展途上にあった楽器は、生産地や職人によってチューニン
グ(調律)やピッチ(音程)が微妙に違い、合奏以前に、それぞれの楽器の
音の高さを揃えるのが大変だったといいます。また、楽団員の技術も均一で
はなく、音楽の素養のない貴族や、財力に欠ける宮廷の楽団の演奏は、どう
しても程度が低くなりがちでした。したがって、宮廷楽団の技量が、貴族の
ステータスを測る基準となっていたことすらあったとか。
オーケストラが、次第に大がかりになるのは、自分の作品として交響曲などの大作を世に発表するようになってからの
ことです。音楽家は雇われ楽団員から芸術家への道を目指し、大衆に支持さ
れる大規模な作品を書くようになりました。
さらに古典派からロマン派の時代へ移行すると、作曲家の好みや主張を反
映して、オーケストラには次会と新たな楽器が加えられていきます。ベルリ
オーズの演奏会などは、楽器の数が前代未聞。その大音量に会場は阿鼻叫
喚の大騒ぎになったとか。
しかし、なんといっても極めつきはマーラーで、合唱を含めて1000人と
いう大編成の曲まで作り出しています。また、近代フランスの印象派の作品
には、流麗な調べをもつハープがよく使われており、日本でも笙や尺八を使
う曲が生まれました。
オーケストラは、200年間にわたる試行錯誤の末、弦楽器、管楽器、打楽
器の3パートで、約100人からなる、今日の編成となりました。どのオーケ
ストラも選抜した定席の楽団員をもち、必要に応じて様会な楽器の奏者をゲ
ストとして招いています。